エル・ブジソムリエのDavid Seijas ダヴィッド・セイハス氏:『消費者はワインを楽しむために、そのワインの背景にある歴史を知る必要がある』

2006年ナリス・デ・オロ David Seijas ダヴィット・セイハス氏 (www.vinetur.com)
2006年ナリス・デ・オロ David Seijas ダヴィット・セイハス氏 (www.vinetur.com)

ElBulli エル・ブジの第9シーズンのソムリエで、現在はElBulliFoundation エル・ブジ財団のメンバーのDavid Seijas ダヴィッド・セイハス氏は、ソムリエという仕事と、そこでの学びについて語ってくれました。

2006年のNariz de Oro ナリス・デ・オロのセイハス氏は、第1回アンドラのワイン寡少規模生産者大会での講演において、いつも通り、そのワインへの情熱、喜び、友愛を込めて語り、ソムリエとしての自分の経験から、アンドラの寡少生産者に対し、標高の高い畑でつくられるワインという、その品質と独自性の素晴らしさ際立ったワインは、価格ではなく、そのストーリーで勝負しなければならないとコメント。『消費者は、ワインの価値を理解するためには、そのワインの背景にあるストーリーを知る必要があり、ソムリエはそのストーリーを語り、ワインに文脈を与える担い手なのです』と、語りました。

 

 

そのために、ソムリエはあちこち旅行したり、テイスティングをし続けているのだと。彼の最近の発見の中では、セイハス氏は、最近少しずつ評価の高まっている、ヴァル・ダランで出会ったフレッシュでアルコールが低いワインや、『凝縮感ほそれほどないが、驚きを与えてくれる、個性的なワイン』であるガリシアのワインについて言及。『私の父がガリシア出身だからというわけではなく、最近ではリベイラ・サクラやモンテレイのワインがとても好きで、手間隙をかけて非常に良質なワインがつくられており、徐々に市場でも認められるようになってきています。』と続けました。

 

 

 

しかし、スペイン国内のワインの消費は下がり続けており、レストランのワインの価格についても会議でも活発に論議されました。『家飲みする人がますます増えており、消費者が1本10ユーロ以上のワインを注文するのが難しくなっています。もちろん、幸運なことに、その価格帯のワインも存在しますが、レストランでは厳しいです。』とセイハス氏。その点について、セイハス氏は、レストランは常に、お料理、セレクトするワインを楽しんで頂くためにあり、ワインの価格は決して、2本目のワインを注文しにくくする価格であってはならないと強調。『私たちソムリエの仕事はワインをご案内することですが、健康上の問題や交通規制上の問題など、ワインをご注文頂けない理由はたくさんあり、価格がさらなるブレーキになってはならないのです。実際、レストラン経営者方々と話をすると、多くのレストラン経営者がテーブルチャージを下げたりしているものの、厳しい状況が続いているとのことです。』と語りました。

 

 

セイハス氏に、ソムリエを目指す人に何かアドヴァイスをお願いしたところ、『とにかく、この仕事が好きであることかな。もし、稼ぎがよいという話を聞いてソムリエを目指すのであれば辞めた方がいい。我々はサッカー選手ではないから。あちこち足を運び、日々勉強する努力を怠ってはならないのです。毎日勉強が必要ですし、それは一生続きます。だから、好きでなくては続けられないかと。ただ、もちろん、多大な満足も与えてくれる仕事だと思います。』

 

 

本の出版、そして、Bullipedia ブジペディアについて

 

あまり知らされていない、2014年にスタートするというエル・ブジ財団について。『具体的に話すのは非常に難しいのですが、エル・ブジ財団は、継続中の革命なのです。Ferrán Adriá フェラン・アドリア氏との仕事は、香港ではとてもクリアであったものが、ニューヨークにつくとまったく違ったものになっていたりというようなもの。ブジペディアについて私が言えることがあるとすれば、我々は、現在、毎日、膨大な時間を費やして、取り組んでいるということです。』エル・ブジ財団の中核のひとつである、この料理の辞典 Bullipedia ブジペディアの目的は、科学に限らず、多くの分野に渡り、世界中に存在する料理に関する知識を整理するという、超人的な試みで、おそらく2016年に発表されるでしょう。

 

 

いずれにしても、セイハス氏は"114 vinos para el 2014 2014年に飲むべき114本のワイン"の出版はしないということは決めているとのこと。『この本の出版は辞めることにしました。これまで出版した4冊で、すでに500以上のワインについて言及しています。今年は、市場のニーズにより合った、"Vinos imbatibles: 150 vinos entre 4 y 10 euros 4〜10ユーロの最強ワイン150本"に取り組んでいます。』とセイハス氏。というのも、セイハス氏は10ユーロを“快楽の価格”と定義しており、これまでも最後に10ユーロ以下のワインの分類を用意していたのを踏襲した格好。

 

 

ワインをオススメする際、ダビッド・セイハス氏にとって明確なことは、『ワインを選ぶときに最も大事なのは、一緒に飲む相手、シチュエーション、背景です。そして、最終的にそのボトルを開けること以上に重要なのは、その先にある、そのワインを生きる、つまり、楽しむことなのです。』と語ってくれました。

 
 
 
[出典 fuente]
www.vinetur.com 2014年1月17日掲載記事